近年注目されている再生医療。株の値動きを見ても再生医療関連銘柄はボラティリティが高く注目度が高いのが伺えます。
ただ再生医療に限らずバイオ関連銘柄は実際に製品化までこぎつけられない可能性も高く、投資という意味では博打感が強くて慎重派には手が出しずらいのも否めないです。
そんな中ですでに脊髄損傷にある程度の効果が認められており、すでに発売もされているニプロのステミラック注(開発コードSTR01)について調べてみました。
ニプロってどんな会社?
ディスポーザブル(使い捨て)医療機器の大手企業。再生医療の研究も行っており、脊髄損傷の治療に一定の効果があるとされている「ステミラック注」という薬を販売し始めました。
売上高は4000億円程度でここ数年は増収が続いています。
ステミラック注ってどんな薬?
ステミラック注(一般的名称:ヒト(自己)骨髄由来間葉系幹細胞)は人の骨髄中にある間葉系幹細胞を利用した世界初の再生医療等製品です。
ニプロと札幌医科大学で研究されてきた再生医療等製品になります。
自己の骨髄から採取した間葉系細胞を体外で培養し、それを点滴静注で体内に戻します。すると、投与した細胞が損傷部に集積し、損傷した神経の再生が促されます。
画期的な新薬が認定される「先駆け審査指定制度」の対象となっており、他の薬剤よりも優先して審査されてきました。
すでに新薬としての国の承認審査を終えて、「脊髄損傷に伴う神経症候及び機能障害の改善(ただし、ASIA機能障害尺度がA、B、Cの患者に限る)」に対してある程度効果があるとして、条件および期限付き承認となっています。
条件および期限付き承認というのは、確実な効果や安全性を確認するにはまだ更なる症例数が必要で、発売後も経過を追う必要があるということです。ステミラックの場合は7年間の期限付きの承認となっており、今後さらに症例数を増やしていく必要があります。
2019年4月に販売が開始されて、 間葉系幹細胞を利用した薬剤は世界初 ということで、大変注目を集めています。
薬の効果はどれぐらいあるの?
ステミラックの治験は外傷性脊髄損傷で、ASIA 機能障害尺度が A、B 又は C の患者を対象とした国内治験において、全 13 例中 12 例で ASIA 機能障害尺度 1 段階以上の改善が認められたことで、一定の有効性があると期待されています。
ASIA機能障害尺度というのは脊髄損傷による障害がどの程度かを表すもので、完全麻痺のAから正常のEまで5段階に分かれています。ステミラックの治験ではAからCまでの障害が比較的重度である被験者を対象に行われています。
標準的な治療では脊髄損傷は予後が悪く、ASIAの一段階改善は ASIA Aの5%、ASIA BもしくはCの50%でしか見られないと言われています。
一般的な改善割合と比較して、明らかに高い確率で改善がみられているということで条件および期限付きでの承認となりました。
薬価はいくらなの?
薬価収載は2019年2月に行われており、14,957,755円です。
かなり高額だなと感じますが、新規性の高いということでこのような値段が付いています。
会社業績への影響は?
薬価がかなり高いので企業業績に大きなインパクトが出てくる可能性はありますが、当面は開発に携わっていた札幌医科大学のみで投与可能となるようです。
また、現在は細胞の培養を手作業で行っているため、年間100件程度が限界なようです。スケールアップが可能な体制が整っている状態ではないので、すぐに売り上げに大きな貢献とはいかないかもしれないですが、将来的には期待が持てる製品となります。
まとめ
治験での症例数が少なく、今後の使用で問題がみつからないかや、製造のスケーリングの問題などまだ不透明な部分も多いです。
薬価が高額となっているのも気になるところです。以前に保険料負担が急増して薬価が問題になっていたオプジーボでは、薬価収載時の値段は729,849円でした。使用頻度や患者の母数も違うため、一概に比較はできませんが今後供給量が増えてきた際には何か問題が出てくるかもしれません。
オプジーボでは臨時的に薬価の改定が行われて薬価が下がることになったので、ステミラックにかかわらず、今後出てくるであろう高額な再生医療等製品では常に不安定要素かと思います。
いずれにせよ、予後が悪いと言われている脊髄損傷に対して効果的な製品ができて来たというのは本当に明るいニュースだと思いますし、今後さらなる研究が進んでいくといいですね。
2019年5月4日追記 :NHKでステミラックが特集されました
NHKにてステミラックの特集が組まれていました。これからますます期待の再生医療等製品ですね。
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